Monthly AOR Magazine

No' 63 Fools Gold / Mr.Lucky


皆さんこんにちは。

ブラコン

 昨年後半から一時的に、80年代初頭の「ニューヨーク・ファンク」というか「ブラコン」(ブラック・コンテンポラリー)ばかり聴いていました。
元々AORは70年代に白人がブラックミュージック(ジャズやソウル)を吸収して発生してきた音楽だと思うのですが、逆にAORがブラックミュージックに影響をあたえて生まれてきたのが「ブラコン」だと思います。

でも、なかなか一枚を通して紹介できるアルバムが少ないのが残念です(^^ゞ

================== Monthly AOR Magazine [No'63] ==================

Fools Gold / Mr.Lucky                (1977)

 今後AORを語る上で外すことの出来ない一枚となりそうなアルバム。「TOTO」や「エアプレイ」の好きな方には絶対に聴いて欲しいアルバムです。2001年に3月に初CD化されたので、比較的入手も楽だと思います。

 「ダン・フォーゲルバーグ」のバック・グループだった「Fools Gold」は1976年にデビューしました。
その時のメンバーは
 トム・ケリー(ボーカル・ギター)
 デニー・ヘンソン(ボーカル・ギター)
 ダグ・リヴィングストン(ピアノ、ピアノ・スティール)
 ロン・グリネール(ドラムス)

ファーストアルバムはイーグルスの「グレン・フライ」、「ジョー・ウォルシュ」がプロデュースに参加したこともあり、典型的な西海岸ポップとなっています。(こちらもCD化されています)

 セカンドアルバムにはプロディーサーがセッション・ミュージシャンを多用したかった為に、1stで参加していたダグとロンの出番が少なくなったり無くなったりしました。しかし二人が「Fools Gold」から脱退したわけではなく、セカンドアルバム発表後には4人揃って「イーグルス」のツアーで前座をつとめています。
 ちなみにプロデューサーは「キース・オルスン」。「フリート・ウッド・マック」や「サンズ・オブ・チャンプリン」(ビル・チャンプリンのバンド)、「グレートフル・テッド」等のウエスト・コーストのロック系の作品を数多く手がけています。

 音楽シーンの変化と共に1978年に解散してしまった「Fools Gold」ですが、その後「トム・ケリー」はLAでバック・アップ・シンガーとして活動を開始。
「エアプレイ」から「デビッド・リー・ロス」の「Just Like Paradaise」のサビのコーラスまで、ジャンルを超えての大活躍。
彼のハイトーン・ヴォーカルは、ビル・チャンプリン、トミー・ファンダーバーク、リチャード・ペイジ&スティーブ・ジョージらと共にLAのスタジオシーンに大きな足跡を残しています。

 また1983年からは「ビリー・スタインバーグ」とデュオ「i-ten」を組み、ソングライター・チームとして活動を開始。ハート「Alone」、マドンナ「Like A Virgin」、シンディー・ローパー「True Colors」、ホイットニー・ヒューストン「So Emotion」、バングルス「Eternal Flame」と、立て続けにNo'1ヒットを量産しています

アルバム参加メンバー

ドラム    :Jeff Porcaro
ベース    :Mike Porcaro
ギター    :Denny Henson,Tom Kelly,Waddy Wachtel,Doug Livingston,Andrew Gold
キーボード  :David Faster,David Paich,Bill Champlin
サックス   :Colin Tully,Mel Collins, Tom Scott
 他にもダン・フォーゲルバーグがラップ・スティールで参加。

このメンバーをみてニヤリとする方は多いことでしょう。

では、簡単に曲の説明(捨て曲が無いです)

1曲目:Sweet Country Air
アルバムオープニングにふさわしいアップテンポなシャッフルナンバー。
聞き所はスバリ「ジェフ・ポーカロ」のドラム(^^)
23歳でこのバスドラ踏まれちゃぁ.....
弟の「マイク・ポーカロ」とタイム感が一緒なので、もの凄く気持ちよいシャッフルです。
「スティーブ・ルカサー」抜きのTOTOってこんな感じなんだろうなぁ。

4曲目:Runnin' And Hidin'
これは「デビッド・フォスター」色が強いです。
というか、まんま「エアプレイ」ですね。コーラスにしても、サビのアレンジも。
誰がプレイしているのかクレジットのないギターソロですが、「ジェイ・グレイドン」が使う、通称「ワイヤー・クワイヤー」と呼ばれる多重録音によるギター・ハーモニーが使われています。
これも「デビッド・フォスター」のアイデアでしょうね。
1980年に「エアプレイ」で完成するスタイルの原型をこの曲で確認することが出来ました。

6曲目:Gypsy Brew
私が最初に気に入った曲。
LPではB面1曲目。
この曲もギターソロは「ワイヤー・クワイヤー」(^^ゞ

7曲目:Mr. Lucky
「スティーリー・ダン」ですね、これは(^^)
ビル・チャンプリンってコーラスだけでなくオルガンも上手いです。
「ジェフ・ポーカロ」って「スティーリー・ダン」の「Katy Lied」のレコーディングに参加したのは21歳....
「ボズ・スキャッグス」の「Silk Degrees」は22歳...
イヤになるなあ、天才は違いますよ。

8曲目:Where Did Our Love Go Wrong
「After the love is gone」路線のバラード。
このメンバーって、こんな曲だとさすがに聴かせてくれます。
後半で転調するのもお約束。

 

 上で書いたように、「エアプレイ」の原型を発見することが出来ます。TOTOもデビュー前、デビット・フォスターもブレイクする前なのですが彼らの音楽的スタイルは、すでにこの頃に完成していたような気がします。


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