Weekly AOR Magazine

No' 42 Groovin' You / Harvey Mason


皆さんこんにちは。

「今年もよろしくお願いいたします」

皆様、いかがお過ごしでしょうか?
前回は1999年12月15日でしたので、2ヶ月近く間隔が開いてしまいました。
仕事の忙しい時期、車の買い換え、いろいろなイベントなどで年末年始は大忙しでした。
メールマガジンのタイトルに「Weekly」とありますが、これからも毎週発行を目標に(笑)ぼちぼちと書いていこうと思っています。

今週末の連休も、演奏会、先輩の披露宴、駅伝!と休む暇無いです。

================== Weekly AOR Magazine [No'42] ==================

Groovin' you/ Harvey Mason (1979)

今年最初にご紹介するアルバムは、最近買ったばかりのドラマー、「ハービー・メイソン」のソロ4作目です。
これが大当たりなのです。

ドラマーとして、最近では「フォー・プレイ」での活躍が有名です。
しかし彼は、「ハービー・ハンコック」の名盤「ヘッド・ハンターズ」からのヒット曲「カメレオン」の共作者でもあります。
また、プロデューサーとしても「リー・リトナー」の「Rit」や、「カシオペア」の「アイズ・オブ・マインド」等もお馴染みだと思います。

もちろんフュージョンブームまっただ中(1976〜1978)年、東の(ニューヨークの)「スティーブ・ガッド」、西の(ロス・アンジェルスの)「ハービー・メイソン」とライバル扱いされていました。
「スティーブ・ガッド」が比較的スクエアなタイム感で、どちらかといえば速いフレーズ(当時のガッド先生は絶頂期でした)が売り物だったのに対し、「ハービー・メイソン」は跳ねるようなリズム感、いわゆる黒人ドラマー特有のジャンプしたグルーブを特色としていました。

そんな彼がドラマーとしても、プロデューサーとしても脂の乗っていた時期の作品です。
当時は「サタデー・ナイト・フィーバー」に代表されてるディスコブームの直後、そして「TOTO」をはじめとするスタジオミュージシャン達への注目等、今までのカテゴリーにとらわれないマーケットが形成され始めていました。
「何でもあり」の1970年代末期に、プロデューサー「ハービー・メイソン」は彼本来の持ち味である「ファンキー」さと、「AOR」的なソウル・フレイバーを効かせた「クロスオーバーなメロディー指向」の作品を誕生させました。

ここで彼が起用したのが「デビッド・フォスター」、「ジェイ・グレイドン」の、その後1980年に「エアプレイ」を結成する二人。
そして「ジェリー・ヘイ」率いるホーンセクションの「シー・ウインド」。
「リチャード・ティー」、「ラルフ・マクドナルド」、「フィル・アップチャーチ」、「ワウワウ・ワトソン」、「デビッド・スピノザ」、「デビッド・ウィリアムズ」といったニューヨークの洗練されたフィーリングを持つスタジオミュージシャン。
更に西海岸系ミュージシャンとしては「ビル・チャンプリン」、「レイ・パーカーJr.」、「デビッド・シールズ」、「リー・リトナー」。若き「シーラ・E」もパーカッションで参加。
その上「TOTO」一派からは「スティーブ・ルカサー」、「マイク・ポーカロ」。
他に「スタンリー・クラーク」、「ボブ・ジェームス」、そして「アース・ウィンド・アンド・ファイヤー」から「バーダイン・ホワイト」!。
これだけのミュージシャンが参加していて、半端な作品になる訳はありません。
どうして今までAOR界で注目されていなかったのか不思議な一枚です。

では、簡単に曲の説明

1曲目:I'd still be there
いかにも「フォスター/グレイドン」な曲。
ゆったりとしたミディアムテンポのアルバムトップにふさわしい曲。「ジェリー・ヘイ」のホーンもゴキゲンです。
ティンパニの効果的な使い方が、さすがトップドラマーだと思いました。

2曲目:Groovin' you
曲ごとのクレジットが無いのですが、「リチャード・ティー」のピアノは一発で分かりますね(笑)。この人もいわゆる「ブランド」でした。(合掌)
「ラルフ・マクドナルド」のパーカッションもお決まりのパターンです。

3曲目:The Race
これはアルバム一のお気に入り。
たっぷりとしたグルーブの曲です。コーラスも、ホーンも、ストリングスもゴージャス。
「ハービー」のへたうまボーカルも気になりません(笑)。

5曲目:Never give you up
もう、まんま「エアプレイ」。
イントロの唸るホルンが「ウルトラ・セブン」風?
ボーカルに重なる「口笛」がちょっと面白いです。
ベースは「バーダイン・ホワイト」?。(サウンドから彼だと思います)
少し、アースっぽいグルーブのような気もします。

7曲目:Here today,gone tomorrow
私の大好きなボーカリスト「ビル・チャンプリン」がメインボーカル。
そしてベースは「スタンリー・クラーク」。途中でウッド・ベースに持ち替えています。
で、やっぱり超高速ユニゾンが出てきます(笑)。
この曲はフュージョン度高いです。「ボブ・ジェームス」のソロもあるし。

9曲目:Kauai
「ラルフ・マクドナルド」のボンゴで始まるハービー作のインストナンバー。
この曲のメロディーかなり好みです。
「ジェリー・ヘイ」のフリューゲルホルンがメロディーを演奏します。
で、この曲を聴くと元「カシオペア」のドラマー「神保彰」のアイドルが「ハービー・メイソン」だという事がよく分かります。影響受けていますよ神保氏、作曲も。
ハービーのハイ・ハットのアクセントには脱帽、凄いっす。(同じドラマーとして、恥ずかしくなりました)
少しオフ・マイク気味でレコーディングされています。<ハイ・ハット
そうそう、「ハービー・メイソン」は、レコーディング時にドラムの音をモニター出来る状態にしてもらい、卓のEQを使わずにドラムのチューニングでサウンドを作るそうです。
エンジニアがドラムサウンドを創ってしまうのが大嫌いな人です。

この後、「アース・ウィンド・アンド・ファイアー」は「I AM(黙示録)」という大傑作を生み出しますが、その中心となったのは、「デビッド・フォスター」、「ジェイ・グレイドン」、「ビル・チャンプリン」でした。
つまり「アース・ウインド・アンド・ファイアー」が白人のスタジオ・ミュージシャンを参加させ、1980年代を意識したサウンドを作るきっかけとなったのは、ベースの「バーダイン・ホワイト」がこの「Groovin' you」で彼ら「エアプレイ」一派と出会ったからだとも言えると思います。
もちろん「モーリス・ホワイト」がこのアルバムから影響を受けた?なんて考えると、このアルバムを聴くのが楽しくなります。

フュージョンのアルバムだと思って購入したのですが、「大当たり」なアルバムでした。

今年もこのように、あまり知られていない「AOR」な一枚を出来るだけ沢山ご紹介していきたいと思います。


<- back to Weekly AOR magazine