Weekly AOR Magazine

No' 40 Friends / Chie Ayado


皆さんこんにちは。

「車を買い替えます」

現在運転中の車が走行距離9万キロを越え、あちこち不安な部分がでてきました。
ドライブシャフトのブーツが破れてグリスが飛び散ったり、ドアの内側からサビが浮き上がってきたり、内装はギシギシ鳴るし、オートマが滑っている感じがしたり・・・

ということなので、思い切って買い換えることにしました。
「もう少したてば2000年型なのに」とも言われましたが、欲しくなったときが買い時(笑)。
元々乗りつぶす人なので、あんまり下取査定のことは考えていません。
(なぜか人よりも走行距離が多いのです、通勤は近いのに)

今度の車もステーションワゴンですが、ナビは付けませんでした。
地図をみながらドライブをするのが好きなのです。紙に印刷された2次元の地図を、頭の中で立体的に変換する作業がいつも楽しく感じます。

その代わりにオーディオはしっかりした物を選びました。アメリカの「McIntosh」というメーカーのシステムを付けます。この「McIntosh」が選択できることが車を決定させた大きな理由です。
(パソコンのマッキントッシュを作っているApple社とは関係ありません)

さて、何て車でしょう?(あんまり知られていないんだよなあ)

================== Weekly AOR Magazine [No'40] ==================

Friends/ Chie Ayado (1999年10月21日発売)

前回からちょっと間隔が空いてしまいました。
「クリスマス・アルバム特集」の予定でしたが、どうしても紹介したいアルバムに出会いました。

上で車を替える事について書きましたが、1曲との出会いで車を変える決心をさせることもあるのです。

車の中でも常に音楽を聴いている私は、CDを購入すると店の駐車場から出るときには既にそのアルバムを車内で聞いています。当然この「綾戸智絵」のアルバムもそうでした。

1998年の日本ジャズ界において最大の収穫とも言われた綾戸智絵ですが、この人、本当に苦労しています。
若くしてアメリカに渡り、ゴスペルクワイアなどであくまでも趣味で歌っていたのですが、アメリカでの離婚をきっかけに帰国。その後、一人息子(もちろんハーフね)を育てるために栄養士の資格を取り、中学校で給食を作りながら苦労の末に41歳でのデビューとなりました。

彼女の歌を聴いた人は「ほんとに日本人か?」と思い、ステージをみた人は「こんなにちっちゃいのにどうしてあんなに歌えるのか?」と思うそうです。(身長147センチ、体重38キロらしい)

音域は素晴らしく狭いです。普通の男性と同じような音域。
抗ガン剤の副作用でのどをつぶしてしまったそうです。(昨年乳ガンの手術を2回受けたそうです)
しかしこれだけ太い声の人は男でも滅多にいないでしょう。
圧倒的な説得力です。腹の底から声を出すとはこう言うことなのでしょう。

「ジャズ・シンガー」として分類されているかもしれませんが、私は本当の意味での「ソウル・シンガー」だと思います。身を削って歌っているのが痛いほど分かります。そういった意味では故「美空ひばり」も、本当の「ソウル・シンガー」でした。

公認ホームページはこちら
http://www.dmi.co.jp/chie/

AORのアルバムではないし、綾戸智絵をご存じの方も多いかと思いましたが、今回はこのアルバムの紹介をさせていただきます。

では、簡単に曲の説明

1曲目:Take me home,country roads
飛行機事故で亡くなった「ジョン・デンバー」の十八番です。
55名のゴスペル・クワイアをバックにたっぷりと歌います。
このクワイアは彼女が指導している全くのアマチュアグループです。前はクワイアなんて興味が無かったのですが、自分が歌うようになると必然的に耳に入ってきますね。

3曲目:Here,there and everywhere
ビートルズの曲ですが、今やスタンダードでしょうか。
ピアノトリオをバックに歌っていますが、2コーラス目のスキャットが素晴らしい。全盛期のエラのようです。ボトムからズンズンきます。
ドラムの「江藤良人」、上手いことは分かっていましたがここまで凄いとは。同じドラマーとして、このシンバルレガートには参りましたよ。
それからピアノの「森下滋」は23歳。やられた。

6曲目:Every breath you take
綾戸智絵の良いところは、自分の気に入った曲はジャンル、年代に関係なく取り上げる事です。これは「ポリス」の名曲だし、3枚目のソロアルバムでは「スマップ」の「夜空ノムコウ」を取り上げています。
「川嶋哲朗」のソプラノサックスが「ウェイン・ショーター」のようです。

7曲目:Ain't no mountain high enough
この曲との出会いが車の買い替えを決意させました。まず車内で聞いて鳥肌が立ちました。
すぐに家に帰り、秋に買い換えたガッツ自慢のパワーアンプで聞いたのですが、聞き終わって感動のあまり涙が流れました。嘘ではなく本当に。
車内では聞くことが出来ない音があることは分かっていましたが、「この曲を車で聴きたい!」という気持ちが「McIntosh」のオプション設定のある車をすぐに欲しくさせました。

まず、最初のクワイアでゾクゾク。
「杉本智和」のウッドベース、すごく気持ちいい。
2番が終わりブリッジを歌い、転調してから再びAメロに入りますが(1分37秒)ここから彼女の音域ではちょっと苦しくなります。出ない部分はオクターブ下げて、55名のクワイアに負けないように本当に必死に歌っています。聞いていて「いっぱいいっぱい」な事が分かります。(音程的に)
でも逆に、まるで男性ボーカリストと掛け合いをしているようです。
このクワイアも素晴らしい。アマチュアでもここまで出来るんだね。
ゴスペル・クワイアは、あえてマイク1本でレコーディングしたそうですが全員のスピリットがびしびし伝わってきます。
当然、私の一番のオススメ。

「アシュフォード&シンプソン」のペンによる、「マービン・ゲイ&タミ・ティレル」のデュエットで有名な、私の大好きな曲です。
作詞家「ニコラス・アシュフォード」が故郷を離れて初めてニューヨークに住んだ時に、マンハッタンの大通りを歩きながら大都会には負けないぞという気持ちで創ったこの曲への想いが、綾戸本人とクワイアの熱唱から感じられます。

8曲目:Sentimental journey
ビアのの弾き語りですが、途中にスキャットが出てきます。しかもトロンボーン風で。
アイデアも豊かです。

彼女のライブの評判が高いのは、彼女のしゃべりによるところも大きいようです。
コテコテの関西オバチャントーク。笑わせて涙を誘う、まるで吉本新喜劇のようだということです。

作家の「村松友視」氏も彼女との出会いを「落雷に打たれた・・・それくらい衝撃的だった」と、雑誌に「綾戸智絵体験」という文章を寄せています。
ちなみに「Friends」のラーナーノーツは「糸井重里」氏。

1999年も私はたくさんのCDを買い、多くの音楽と出会いました。
でも一番衝撃を受けたアルバムは、間違いなくこの一枚です。


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