Weekly AOR Magazine

No' 28 TOTO / TOTO IV


皆さんこんにちは。

「野村義男、通称:よっちゃん、元 たのきんトリオ」

7月30.31日の2日間にわたり、静岡県沼津市で「狩野川トワイライトコンサート」なるものが開催されました。狩野川の河川敷で無料のコンサートを毎年開催しているのですが、今年は「渡辺香津美」がメインでした。

30日の金曜日はベースの「櫻井哲夫」とドラムの「山木秀夫」のトリオで硬派なフュージョンだったそうです。
私は31日(土曜日)のステージを見に行ったのですが、この日は「世良正則」がボーカルで「野村義男」がギターで参加していました。
最初は前日のトリオ+「野村よっちゃん」でインストのナンバーを何曲か演奏しました。その後、キーボードと「世良正則」が登場し、「上を向いて歩こう」や「ゲット・バック」等の一般ピープル受けする曲を演奏しました。途中、よっちゃんのボーカルでクラプトンの「レイラ」を演奏した後は、「ツイスト」ナンバーのオン・パレードでした。

「燃えろ、いい女」なんて、すごく盛り上がりました。香津美先生は涼しい顔をしてもさすがでしたが、よっちゃんが熱かった。すっかりギターキッズになって、「背中弾き」や気持ちいいくらい激しい「ヘッドバンキング」をしていました。ギターコレクションのなかから「エクスプローラー」も持ち込んでいたし。

演奏後にステージ正面で、「世良正則」追っかけと「野村義男」追っかけがグループごとにミーティングをしていました。
結構な年の女性が年甲斐もなく騒いでいるのには、ちょっと近寄りがたい雰囲気がありました。

================== Weekly AOR Magazine [No'28] ==================

TOTO / TOTO IV         (邦題:聖なる剣)             (1982)

まずは訂正。
前回の「Doobie Brothers」のベストアルバムVol1、Vol2の2枚がCD化されていないと書いてしまいましたが、その後「2in1」パッケージで発売されているものを発見。確認するべきでした。ごめんなさい。

さて、今回はTOTOの4枚目です。
グラミー賞7部門に輝いたTOTOの最高傑作です。
AORの代表的なアルバム「シルク・ディグリーズ/ボズ・スキャッグス」でのレコーディングが事実上TOTOの結成のきっかけとなりましたが、他にも数多くのAOR系のアルバムにTOTOのメンバーが参加しています。
70年代後半から80年代前半に、一番洗練された音楽性(当然テクニックも)を持った人たちだったということは確かだと思います。

この「TOTO IV」はレコーディングに9ヶ月、時間にして1000時間以上費やしたそうです。
ベーシックなレコーディングを「アル・シュミット」、オーバーダブを「トム・ノックス」、最終的なミックスは「グレッグ・ラダニー」が担当という、非常に贅沢な作品です。

では、アルバムの紹介。
個人的に思い入れが強いので、今回はドラム(ジェフ・ポーカロ)中心となっています。結果的に長くなってしまいました。

1曲目:Rosanna (Lead Vocal:Steve Lukather,Bobby Kinball)
アルバムからのファーストシングルです。でも全米第2位でした。
後に「ジェフズ・シャッフル」と呼ばれるようになったハーフタイム・シャッフルの名曲です。
みんなが彼をコピーしました。でも誰も彼のグルーブには近づけませんでした。
しかしジェフ自身はインタビューで、「レッドツェッペリン」の「フール・イン・ザ・レイン」でのジョン・ボーナムのグルーブをコピーしたと語っていました。あくまでも謙虚な人でした。
この「ジェフズ・シャッフル」ですが、右手は普通の8分音符のシャッフル、左手は「ダブル・パラディドゥル」(ドラム・ルーディメントの一つ)の右手リードの時の左手パターンが基本となっています。
こんな説明だと一部のドラマーしか分からないでしょうね。

2曲目:Make believe (Lead Vocal:Bobby Kinball)
これも3連のリズムです。
で、ハイハットのアクセントがなかなかコピーできません。
1小節中に8分音符で12回ハイハットを刻むのですが、1.4.6.8.10回目にアクセントがあります。(更に12個目は気持ちオープンにして次の小節の頭につなげる)
エンディング直前の「キメ」に ニヤっとしてしまいます。

3曲目:I want hold you back (Lead Vocal:Steve Lukather)
作曲者のルカサー自ら「いかなるバラードより、バラードらしい曲だ。自分が歌う事によって、より深みが出るんだ」と語っています。すごい自信です(笑)。
オーケストラのパートが非常に効果的ですが、これは「アル・シュミット」だからできたサウンドだと思います。広いスタジオでオフマイクで大人数のアンサンブルをレコーディングさせたらなかなかこの人以上のエンジニアはいません。

6曲目:Afraid of love (Lead Vocal:Steve Lukather)
今や彼らのライブで欠かせない曲です。ストレートなリズムのロックンロールなのですが彼らが演奏するとこんなにもキャッチーな曲になってしまいます。間奏部の転調、キメ、このへんが他のバンドには見られない特徴です。4分の2拍子が多用されていますが、全然違和感を感じさせません。
イントロのルカサーのギターの音も素晴らしいのですが、その後に出てくるジェフのフロアタム、完璧なチューニングです。
両面「コーテッド/アンバサダー」のドラムヘッドで、オープンチューニングといってもわかるのはドラマーだけでしょうか。
ジェフのチューニングはすべてフィーリングだそうです。
「ピッチを聴けばそれぞれのボルトがキーの感じを教えてくれる。ルーズかタイトかでドラムの調子がわかる」とのこと。ちなみに彼は当時35組ほどのドラムセットを所有しており、レコーディングには4セットほど持ち込んだようです。スネアは4台だけということは考えられませんが。

7曲目:Lovers in the night (Lead Vocal:David Paich)
6曲目の「Afraid of love」から続いて始まります。これも、よりヘビーなロックンロールサウンドになっています。「スティーブ・ポーカロ」のシンセと、ルカサーのギターのオーケストレーションが曲に厚みを与えています。
「スティーブ・ポーカロ」は「とにかくすべてがうまくいった。自分たちが驚く位一つもミスのないアルバムだ。」と語っています。みんなすごい自信家です。再確認したのですが、彼らコーラスもめちゃめちゃ上手いです。やはり絶対音感を持っている人達は違う・・

8曲目:We made it (Lead Vocal:Bobby Kinball)
ジェフのドラムはシンプルですが、タンバリンが凝っています。
サビのキメですが、ルカサーのギターは左右で全く違ったリズムで動いています。ちょっと聞いただけでは2本には感じません。
それと残念なことに、私のCDはこの曲のエンディング(3分50秒付近)で音が歪んでいます。マスタリングに失敗しています。

9曲目:Waiting for you (Lead Vocal:Bobby Kinball)
「ボビー・キンボール」と「デビッド・ペイチ」の曲なのですが、サウンドはすっかり「スティーブ・ポーカロ」です。シンセベースがムーグっぽくないのが彼らしい。
おそらく「プロフィット5」だと思うのですが、アナログポリフォニックシンセ大活躍です。
このサウンドがマイケル・ジャクソンの「スリラー」に結びつく訳です。(同じ時期にレコーディングされています)
まあ、こういうスタイルを確立したのは巨匠「クインシー・ジョーンズ」の右腕「Greg Phililgens」だと思いますが。(クインシーの名盤、「愛のコリーダ」早く紹介しよう)

10曲目:Africa (Lead Vocal:David Paich)
TOTOにとって初の全米No'1となった曲です。(83年2月5日付)
独自のアフリカングルーブをもった曲です。今でも当時「ベスト・ヒット・USA」で流れていたプロモーションビデオを覚えています。小林克也もまだまだ髪の毛多かったよね<当時は
作家「レイ・ブラッドベリ」のフィクションを思い出して作った曲だそうです。
この曲の特徴でもあるパーカッションは「レニー・カストロ」とポーカロ兄弟の父親「ジョー・ポーカロ」(ジャズドラマー)が重要な役割を果たしています。コーラスには「ティモシー・シュミット」(イーグルス)も参加しています。(彼の「So much in love」はCMで使われていますよね)
独特のグルーブ、ハーモニーの美しさなどこの曲によってTOTOというバンド名を不動のものにしました。でも今聞いてみたところ、ちょっとエンディングが物足りない感じがしました。

83年のグラミー賞では「アルバム・オブ・ザ・イヤー」を始め、「レコード・オブ・ザ・イヤー」(ロザーナ)等の7部門受賞に輝きました。
ルカサーは「(自分たちが参加した)ドナルド・フェイゲンの「ナイト・フライ」がアルバム・オブ・ザ・イヤーをとると思っていたから・・・」と驚いていました。

TOTOはこのアルバム完成直後、オリジナルメンバーであったベースの「デビッド・ハンゲイド」が家庭のためにグループを離脱。代わりにポーカロ3兄弟の次男「マイク・ポーカロ」が加入。84年にはボーカルの「ボビー・キンボール」も音楽性の相違のために脱退しました。
つまり、オリジナルTOTOのメンバーでレコーディングされた最後のアルバムです。

「ジェフ・ポーカロ」は1992年8月5日、自宅の庭で殺虫剤を散布中に心臓麻痺を起こしすぐに病院に運ばれましたが、その夜 38年の人生を閉じてしまいました。

少し重めのサウンドにチューニングされたスネアに、気持ち突っ込み気味のバスドラム。「パイステ」のシャリシャリしたシンバルの音。すごくアナログなドラムサウンドです。CDじゃダメなんです。
もうレコードの中でしか聞けません。

もう一度書いておきます。

みんなが彼をコピーしました。でも誰も彼のグルーブには近づけませんでした。


<- back to Weekly AOR magazine